オリジナル AI アートに関するブログです．AIアートをつくるときは通常，英語でこまかい記述をプロンプト (呪文) としてあたえますが，そうせずに，みじかい造語や絵文字だけをつかって，AI に自由にアートをつくらせています．

AI アート・プログラムにあたえるプロンプトの文法

おもに Stable Diffusion という AI をつかって，絵画風の画像を中心につくっています． この場合，AI にあたえるプロンプトを構成する語は，画家名あるいは主格と，対象名あるいは目的格にわけられるとかんがえています． 動詞に相当することばをいれることもできますが，必須ではありません． また，通常の文法で問題になる語順や助詞・前置詞・屈折などはあまり気にする必要はないとかんがえられます．

画家名としては，たとえば “Picasso” とか “Kanskoy” ということばをあたえることができます． “Kanskoy” は造語であり架空のなまえですが，それをあたえると (すくなくとも Stable Diffusion 1.5 では) 常に絵画風の画像を出力するので，画家・主格として解釈されているのだとかんがえられます． (“Kanskoy” が画家名として解釈されるのは，あとでもうすこしくわしく述べるように “Lanskoy” という画家がいたからだとかんがえられます.)

対象名としては “cat” とか “🌠” (流星) などをあたえることができます． これらをあたえると猫や流星らしきものの絵を描くので，対象・目的格として認識されているのだとかんがえられます．

主格も目的格も省略可能であり，ひとつのことばが AI によって主格として解釈されたり，目的格として解釈されたりします． たとえば “Dali” ということばをあたえるとダリ風の絵を描くこともあり，ダリの絵を描くこともあります． また，ダリ風の絵にダリらしきひとが描かれることもあります． つまり，“Dali” は主格と目的格の両方として解釈されることもあるということです．

“Painting” という語をプロンプトにいれることで絵画風の画像になりやすくなると同時に画家名が主格と解釈されやすくなりますが， それでもなお目的格として解釈される，つまり絵に描かれてしまうことがあります． そのような場合には画家名に “by” をつけることで主格と解釈されやすくなります．

通常の文章ならば動詞が欠かせませんが，AI アートのプロンプトでは画像を描くことに特化されているので，動詞はかならずしも必要ありません．それでも，ときには “painting” とか “🖼” という，動詞に相当することばもいれます． そうしないと絵画風の画像にならないか，写真風の画像が多くて歩留まりが低下するときです．ただし，“painting” は名詞として解釈されているかもしれません．名詞として解釈しても同様の効果をもちうるからです． “paint” も動詞として解釈されうることばですが，名詞として解釈されると派手な色でぬられることになります． そういうときには “paint” を負のプロンプトとしても指定することによって，名詞としてのはたらきをおさえることができます． “painting” に関しても同様に，負のプロンプトとして指定することによって，絵を描いている画像が出現するのをおさえることができます．

文法というと，通常は語順や助詞・前置詞・屈折などが必要になりますが，Stable Diffusion のプロンプトに関しては，通常はそれらを考慮することは不要です． ただし，動詞のかわりに “by” をつけることで主格であることが示せる場合があります． つぎの画像においては，Canskoy や Fanskoy という仮想の画家の絵を描かせるために “by canskoy”， “by fanskoy” というプロンプトをあたえています． これらのプロンプトをあたえるとロシア風や旧ソ連圏風の絵を描きますが，それはかつてランスコイ (Lanskoy) というロシア出身の画家がいたためだとかんがえられます． ただし，ランスコイが活動したのはフランスであり，その作風はこれらの絵とはまったくちがう抽象画です． また，Lanskoy の L を K, C, F などにおきかえることでどのような効果があったのか，よくはわかっていません．

話しことばの文法はどういうことばが話されたかを分析してきめられますが，画像 AI はことばを生成しないので，文法を分析するてがかりは，あたえたことばがどのように解釈されたかということだけです．