有名な Whittaker らの論文 [Whi 96] をはじめ,メイルの内容やつかいかたを分析した論文は多数あるが,その大半は勤務先におけるメイルに関する分析である. 現在ではおおくのひとが個人使用などの目的のメイルアドレスももっているが,そこでのメイルを分析した論文は,すくなくとも私はまだみていない. 勤務先のメイルと個人使用のメイルとでは内容がかなりちがうはずであり,したがって,とくにそれをとりあげて分析する価値があるはずである.
私自身についていえば,時期によって個人使用のメイルのつかいかたはかなり変化してきた. 阪神大震災のとき (1995 年) にはメイルアドレスをひとつしかつかっていなかったが,その後,勤務先と個人使用のアドレスを分離してからしばらくは,ボランティアに関連するメイリングリスト上のやりとりがおおかった. ところが,現在ではすっかりかわって,個人のメイルアドレスに関しては,スパムをのぞいてもメイルの大半は楽天の店舗などからの広告メイルになってしまった. こういう状態ではプロジェクトの遂行のために必要になるような複雑なやりとりはめったに発生しないので,メイラーが高度な機能をもっている必要もあまりない.
現在は他のおおくのひとにとっても個人使用のメイルにはあまり複雑な構造はないのではないかとかんがえられる. しかし,今後は退職者がより積極的にメイルをつかうようになり,またボランティアなどのために個人使用のメイルでもっと複雑なやりとりをするようになるとかんがえられる. したがって,その意味でもあなどれないであろう.
参考文献
- [Whi 96] Whittaker, S. and Sidner, C., “Email Overload: Exploring Personal Information Management of Email”, CHI '96, 1996.