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MWF:技術調査

QuickML におけるメイル・アドレスの用法 ― 機能実現の手段

QuickML [Tak 03] [Mas 03] は,メンバーの登録・削除や他のメイリング・リスト管理機能がかんたんなメイルをおくるだけで実現できるプログラムである. QuickML は SMTP サーバとして実現されているため,どんなメイル・クライアントからも使用することができる. SMTP は機能がかぎられているため,単純なメイルの送受信以上の機能を実現しようとすると,“to”, “cc” のような宛先指定をうまくつかう以外に方法はない. QuickML はそれをうまくつかって実現されている.

過去にはメイルを送信するためにさまざまなプロトコルが使用されたが,現在ではほとんど SMTP (Simple Mail Transfer Protocol) がつかわれている. メイルが単なる文字情報のやりとりだけでなく,さまざまな用途につかわれていることは Dabbish ら [Dab 06] などで指摘されているが,さまざまな用途に対応するには本来ならばさまざまな機能が実現できる必要がある. ところが,SMTP はその名のとおり simple であり,非常にかぎられた通信しかできない.

Majordomo や fml のような従来のメイリング・リスト管理プログラムにおいては,メイルのタイトルや本文にリストを管理するためのコマンドを指定するようになっていた. しかし,このような方法ではメイルのタイトルや本文を本来の目的すなわち人間の読み手への情報伝達のためにつかうことができなくなってしまう. その機能をそこなわずに拡張機能を実現するには宛先や送信元などをうまくつかう以外に方法はない.

QuickML においては,このかぎられた機能だけをつかって拡張されたセマンティクスを実現するため,“to” や “cc” に指定されたメイルアドレスをメイリング・リストのメンバーとして追加するというような方法をとっている.

高林 [Tak 03] によると QuickML はメール・エージェントという部品を追加することで拡張できるということだが,基本機能ははじめからくみこまれている. 基本部分からモジュラーな構成にできると,より拡張性があってよいようにおもわれる.

  • [Dab 06] Dabbish, L. A. and Kraut, R. E., “Email Overload at Work: An Analysis of Factors Associated with email Strain”, ACM CSCW '06, pp. 431-440, 2006.
  • [Mas 03] Masui, T. and Takabayashi, S., “Instant Group Communication with QuickML”, Group 2003 Conference, 2003.
  • [Tak 03] 高林 哲, 増井 俊之, “QuickML: 手軽なグループコミュニケーションツール”, 情報処理学会論文誌, Vol. 44, No. 11, pp. 2603-2616, 2003.

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2008-04-26 18:24 に投稿されたエントリーのページです.

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